2023-11-03 その他 執筆者:kou

4.合格体験記-前編-【kou】

今回から3回に亘って、合格体験記を書きます。

繰り返しになりますが、
私は令和4年の論文式試験に人生をかけて挑戦して、
不合格になりました。

立ち直れないほどショックを受けました。

SNSで合格者の投稿や、合格インタビューなどをみて
正直、羨ましいと思ったし、
胸をえぐられる思いも感じました。

でも、そこで合格者の方の勉強法や
心構えを自分に取り入れて、
心機一転、舵を切れました。

今これを読んでいただいている方の中にも、
一年前の私と同じ立場の方も多くいるかと思います。

これから不動産鑑定士を目指す方、
悔しい思いをして再起を誓った方々に
少しでも有益な情報をお届けできればと思います。
(かなり長文になってしまったので、
  2回に分けて読んだ方がいいかもしれません)

<目次>

1.勉強再開~2回目の短答式試験まで
  (2022.11~2023.4)
2.2回目の短答式試験(2023.5.21)
3.第1回TAC全国公開模試
  (2023.5.26~28)
4.第2回TAC全国公開模試
  ~本試験直前まで(2023.6~7)

【1. 勉強再開~2回目の短答式試験まで(2022.11~2023.4)】

・令和4年の本試験の結果

 本試験の成績通知書と答案が返ってきました。

ほんと、自惚れ過信野郎でした。
合格最低点に79点も足りていませんでした。

そして何より衝撃だったのが、
鑑定理論(論文)で69点/200点しか
とれていなかったことです。

全体的に合格点に届いていないうえに、
最重要科目の鑑定理論が壊滅していました。
ここまで惜しくもないと逆に吹っ切れました。

全力で1年間やってようやく届くレベルだな、
やりきるしかないなと。

不合格になったら、必ず開示請求して自分の書いた
答案と向き合ってください。

私は合格の自信があったもののいざ自分の答案を
みてみたら鑑定理論で定義も答案構成も、
書いている内容もうすうすぺらぺらで
恥ずかしくなりました。
現実と対峙して次のステップに進んでいきましょう。

・通信から教室講座になって思ったこと

私は3年間、通信で講義を受け答練も教室で受けたことはなかったです。
休日にTACの自習室を利用していましたが、
公認会計士や税理士の受験生ばかりで
不動産鑑定士の受験生なんて
ほんとに存在するのかくらいに
思っていました。

合格年はすべての講義と答練を教室で受けました。
最初、画面でしかみていない講師陣を
生でみたときは芸能人に遭遇した感覚でした笑

そして、私は上級本科生だったため
前年度に悔し涙をのんだ受験生たちと
机を並べて講義を受けていました。

また、アクセスα・βフルパックで受講していました。
アクセスの教室講座は
毎週土曜日朝9時から開始なので
本気で合格を目指す人たちが
休日の朝から受けています。

通信生は周りに勉強仲間がいなくて
孤独かもしれませんが、
確かに不動産鑑定士受験生は存在し、
毎日しのぎを削って勉強しています。

・勉強の到達度

私は過年度生だったので、
講義も答練もわりと余裕をもって
臨むことができました。

また、1回目の全国模試を本番だと
仮定して、全科目仕上げる
計画にしました。

教養三科目は、上級講義を受けながら、
自分のサブノートに追加事項を記載して、
内容をより充実させていきました。
本試験時を100%とすると年内で
だいたい50%くらい
仕上がっていたと思います。

鑑定理論は基準をだいたい10日で一周していました。
基準の暗記精度は年内で65%くらいでした。

これは、基準・留意事項のうち、
[区分地上権、農地・林地、近隣地域の地域分析の留意事項、ホスコルド式、借入償還余裕率の活用、関与不動産鑑定士の留意事項、借家権、各論3章の留意事項]
を除いた暗記の精度でした。
私は上記の範囲は、本試験までも暗記していません。

私は、真正面から基準を丸暗記して臨みました。
今回は詳しく書きませんが、基準に載っていないけど
覚えた方がいいこと(ex.市場分析の定義)、
答練で頻繁に出てくる表現
(ex,必要性、有効性、困難性、特徴等)
に関しても、ポケットサイズの基準に書き込んで、
どこへ行くにもこれを持ち歩き暗唱してました。

最終的には、基準・留意事項に加えてこれらの事項も暗記したので、上記の暗記外箇所を除いても、基準は85%くらい覚えたと思います。

・不退転の覚悟

「絶対合格したい

 ≒もう不合格であんな思いしたくない」

私はとにかく、不合格になる恐怖と闘っていました。
無理に無理を言って、やらせてもらった泣きの一年。
絶対にもう落ちることのできない、
とてつもないプレッシャーに
押しつぶされそうでした。

その恐怖もあり、ほんとに一日も
ムダにできないと思っていました。

自分の結婚式の当日の朝にも
勉強してました。

紅葉のきれいな11月の朝。
光り輝くみなとみらい、山下公園。
散歩したり、ラジオ体操してる人たち。
そんな中、ひとり、
日課の基準暗唱ウォーキングを
しながら山下公園を歩く…。

ぶつぶつ基準を唱えながら歩いてる
やばいやつなんて、私しかいません。

なんでこんな人生最高の日にも
基準開いてるんだろ…。

山下公園からみなとみらいにかけて
散歩しながら、2時間基準を唱えました。

正月も毎朝6時に起きて勉強しました。
せっかく習慣化した勉強のペースが
乱されるのがこわかったです。

家族行事で箱根駅伝を
現地観戦しに行った時も、
ランナーがくるまで、国道1号沿いで
基準暗唱してました。

ほんと何してんだろ…お正月のこんな日に
家族もいるのに。

合格したいというよりも、
落ちる恐怖に支配されてました。
とにかくもうあんな苦しい思いは
したくない、その一心でした。

【2. 2回目の短答式試験(2023.5.21)】

サンシンして2回目の短答式試験です。
これは余裕をもって臨めました。
マークミスだけ気を付けようと。

会場はベルサール高田馬場
(東京会場)でした。
例年になく、令和5年の東京会場は
この1カ所のみでした。(例年2会場)

大ホールに1000人以上集結していました。
トイレ激込みでした。
私は事前に下見をして、大ホールの奥に
オフィス棟があり、そこにカフェとトイレ
芝生の広場があるのを知っていたので、
お昼は芝生に寝ころびながら、
軽く基準読んでました。
結果、短答は難なく通過しました。

【3.第1回TAC全国公開模試(2023.5.26~28)】

前述しましたが、私はこの全国模試を
本試験だと思って全科目仕上げてきました。

TAC全国模試は可能な限り
会場受験した方がいいです。

本試験と同様の時間で行われるので、
各科目開始前にどう過ごすか、
昼食どうするか、疲労度など本番を想定できます。

そして、会場受験する場合は迅速に
手続きする必要があります。
もたもたしていると、会場の枠が埋まってしまいます。

私は一つだけTACの校舎以外の会場の
KPP八重洲で受けました。
あえて慣れない環境で受けることで
本番を想定したかったので。

結果は、20位以内に入ることができ、
勉強法が間違ってなかったのを確認でき、
弾みが付きました。

このときの勉強の到達度は
本試験時100%とすると
教養科目85%、基準は基準以外の文言含めて90%くらいでした。

【5. 第2回TAC全国公開模試~本試験直前まで(2023.6~7)】

・第2回TAC全国公開模試

第2回TAC全国模試は、
本試験の順位と連動するといわれます。

先生曰く、ここで30位以内の人は
ほぼ100%合格しており、
50位以内に入ると70%くらいが
合格しているといわれています。

2回目の全国模試は就活にも影響します。
どの鑑定会社の面接でも
模試の順位は必ず聞かれます。
採用の決め手になるわけではありませんが、
順位が高いと自分自身、自信を持って
面接に臨めるし、企業側の印象も良いです。

また、本試験を受ける際の
お守りがわり(精神安定剤)にもなります。

結果的に、私は会場受験で
50位以内に入ることができました。

このときの勉強の到達度は本試験時100%とすると
教養科目95%、基準は基準以外の文言含めて
95%くらいでした。

しかし、模試の結果は1,2回目とも
満足いく結果になりましたが、
私は全然、心に余裕はありませんでした。

もちろん、このままいけば
受かるなとは1mmたりとも思いませんでした。

私は多浪生なので、2020年合格目標~2023年合格目標の
4年分の答練を持っていました。
科目にもよりますが、全国模試は過去の答練や全国模試で出題された問題が出題されており、過年度生に圧倒的に有利です。

特に会計学は、2年おきにほぼ同じ問題が
出題されていて、
私は答えを知ってるようなもんだったので、
高得点を取れて当たり前でした。

(TAC生が経済学や会計学に不満を持っても仕方ないのかも)

そういう事情もあったので、模試の順位が良くても
全く、合格できる、余裕だなとは思いませんでした。

・本試験まで残り1ヶ月

本試験までの残り1ヶ月は、基準とサブノートで全科目・全範囲を1週間で回していました。

私は1回目の全国模試を目標に、かなり早いペースで
全科目仕上げていたので、残りの1ヶ月は、
「詰め込まなきゃ」ではなく、
「忘れないようにメンテナンスしよ」という
精神状態でした。

追い込まれているわけではなく、むしろ忘れないうちに
早く本試験の日が来てくらいに思ってました。

・残り1ヶ月の勉強で重要なこと

<令和4年の不合格時の失敗>と<令和5年の合格の勝因>は
以下の通りです。

これは重要で、私の失敗を踏まえて、
これから受ける皆さんには私と同じ失敗をしないように
参考にしていただければと思います。

① R4:出題予想ランキングの

   要注意論点やAAランクのみに

   重点をおいて勉強し

   Bランクは捨てた。

 R5:出題予想ランキングの要注意論点や

   AAランクは厚く勉強し、

   その他の範囲も書き負けない

   程度には広く浅く勉強した。

 <解説>
R4は社会人受験生で、とにかく時間がなかったし、
勉強も間に合っておらず余裕がありませんでした。

 そこで当時の私は、

「Bランクは出る可能性低いだろ。
要注意要注意論点しっかり書けるようにしよ」
と考えました。

するとR4の本試験では、
民法で2年連続、信頼関係破壊の理論
会計学でのれん、鑑定理論で総論第1章が出ました。

正直、全部出ないだろうと思って1カ月間、放置していたので暗記の精度も落ちていました。

ここから重要なことですが、
上位層や合格者の多くは、
講師が今年のヤマだと言った範囲は
当然のように仕上げてきます。

勝負の分かれ目になるのは、
今年の出題は予想されてなかったけど、
予備校のテキストには載っていて重要な範囲です。

誰も解けない問題はみんなできないので、
差がつきません。
(R5のミクロは費用最小化の問題がでましたが、初見で全く分からず、ほぼ白紙で出しました)

TACでは本試験の2週間くらい前に、
ヤマ当てセミナーをやりますが
当たるのはせいぜい40~50%と思った方がいいです。

② R4:教養科目の直近の

    過去問を分析しなかった

  R5:教養科目の直近の過去問を分析した

<解説>
R4時はどうせ直近の論点なんて出題されないだろうし、
教養科目の過去問はほぼやらなかった
という合格者も多いから時間かけられないなと思ってました。

R5も教養科目、鑑定理論(論文)ともに
過去問は一切解いてないです。
演習だけ推奨過去問を1回ずつ解きました。

ではどういうことかというと試験委員のクセを
掴むために、過去問を分析しました。

初学の方に向けて、概要を書きますが、

・民法・経済学・会計学はそれぞれ問題1・問題2に

 分かれており、問題1を1人の先生が、

 問題2を別の1人の先生が作成します。

(計2名)

・試験委員の先生は大学の先生です。

 例年1月末だったか2月上旬ころに発表されます。

 任期はだいたい3年くらいです。

・教養科目は範囲が広いですがそれぞれの先生には

 専門分野があります。

 特に経済学は、試験委員の専門分野から

 出題されることがかなり多く、予備校の予想が

 的中することが多いです。

 (民法、会計学はここ3年くらいはあまり試験委員色が強くないような)

本題に戻りますが、
試験委員のクセを掴むについてです。
(これは前年の試験委員が、継続して次年度も出題する場合に当てはまります。試験委員が交代になった場合は、当てはまらないです)

R5の試験はラッキーなことに全員がR4からの
継続でした。
試験委員が同じだと出題範囲が予想しやすくなったり
問題の特徴を抑えやすいです。

・民法
問題1
R4、R5の問題1を担当された試験委員は、典型論点を
真正面から出題されています。R4がそうだったので、
今年も落ち着いて解答しようと準備してました。

問題2
R4、R5の問題2を担当された試験委員はクセ強でした。
ひらがな多様、口語調の問題文、ひねりのある問題。

この試験委員はR3、4,5と担当されていますが、
やや難でひとひねりある問題を出すのが
わかっていたので、最後に解こうと事前準備してました。

そしてこの試験委員はR4に贈与契約を鑑定士試験史上
初めて出題したり、ただ条文に当てはめるだけの問題を
出題したりしていたので、今年も変化球あるぞと、
心づもりしといたのが功を奏しました。
これだけで本番落ち着いて、解答できます。

今年も借地借家法から出題してきたり
問題文と条文を参考に借地期間20年が
無効なことに気づいたうえで、
論点を抽出しなきゃいけないとこ、
条文読んでただ当てはめる問題など、
これでもかとクセを出してきましたが、
なんとか対応出来ました。

・経済学

●ミクロ経済学

 ミクロ経済学はR3、R4、R5と担当されました。

 この試験委員の専門分野は情報の経済学です。

 情報の経済学の分野は

  ・アドバース・セレクション

  ・モラルハザード

 関連が深い分野として

  ・ゲーム理論

  ・不確実性

 関連がある分野として

  ・外部性

  ・公共財

があります。本試験ではまさにこの分野が
出題されました。

 R3:ゲーム理論、不確実性

 R4:公共財、アドバース・セレクション

 R5:生産者行動の理論、外部性

これをみてもわかるように、
経済学は試験委員の研究分野、色が特に強いです。
経済学については、予備校の答練が
面白いくらい的中します。

R5の生産者行動の理論のように
専門分野外から出題された場合は、
ほとんどの人が白紙になります。

この試験委員は毎年、小問(1)(2)という形で、
2つのテーマを聞いてきます。

R4のときは、アドバース・セレクションが
大本命と言われていました。
当時の私は、過去問研究していなかったので、
2つのテーマが聞かれるという頭がなく、
アドバース・セレクションだけ完璧にやってました。

しかし、公共財はもちろん基本講義や答練で
やっていましたが、
本試験1ヶ月前まともに見ていなかったので、
本番でイージーミスをしてしまいました。

試験委員の出題の仕方、抑えといたほうがいいです。

●マクロ経済学

マクロ経済学はR2、R3、R4、R5と担当されました。
(R6はさすがに交代?)

この試験委員は自身も不動産鑑定士で、
問題に特色ありありでした。
自身も実務家ということで、
実際経済で起きている問題について、
図を読み解き、それを経済学の知識で
説明する問題でした。

R4は全受験生を絶望させる
難解な問題を出題されていて、
私はかなり覚悟してR5に臨みました。

例外でR2~4のこの試験委員の問題だけ、
何度も過去問を確認しました。
すると、一見難しそうでも、数式を展開すれば、
解答できる箇所があったり土地の価格決定の理論式や、
土地価格のファンダメンタルズ(根元的要因)が
繰り返し出題されてるとわかりました。

この試験委員でない限りここまでする必要はないと思いますが、
日銀の政策(イールドカーブ・コントロール)
低金利の今なぜ不動産価格が上昇してるのかといったことは考えていました。

これは試験勉強というよりかは、私が不動産屋なのと経済学を勉強して、実体経済と学問がどうなってるのか興味を持ったからもあります。

・会計学

会計学はR5の試験委員の一方が
R3に就任してから、極端に記述量が少なくなっています。

そのため、キーワード中心に覚えてそれを記述の中に
端的に解答しようと準備してました。

だいぶ長くなってしまいました。
次回は本試験当日についてのあれこれを書きます。

NEXT… 5.合格体験記-中編-