1,出題の意図について思う事
不動産鑑定士試験の問題は「試験委員からのメッセージ」だと思っている。
出題の趣旨では「基本的な理解を問うものである」が頻出するのであるから、
不動産鑑定士ってどんな仕事かわかってますか?
あなたにその資質、ありますか?
を問うているのでは?と感じている。
若干飛躍するが、
「こんな鑑定士になってほしい」という願いが込められているように思う。
この理解を前提とすると、
①近年の鑑定士の不祥事
②不動産に絡む社会的な問題
これらの情報は、業界健全化の為に知ってて当然な気がする。
実際に②は2025年の論点だったのではないかと思い(偶然だろうけど)、
この辺りを掘り下げてみたいと思う。
2,①不動産鑑定士の不祥事
今年、不動産鑑定士の懲戒処分が発表された。
※(公社)日本不動産鑑定士協会連合会 令和7年3月19日
https://jarea.org/cms_files/general/info/choukai_250319_public.pdf
<違反事由の一部切り抜き>
・継続賃料の鑑定評価であるにも関わらず、現行賃料を前提としていない。
・期待利回りをそのまま継続賃料利回りとして採用。
・直近合意時点における基礎価格に対する純賃料の割合を踏まえていない。
「依頼者の要望に応え、山林の継続賃料を、現行賃料の数倍にした」
という案件。
演習も含め、継続賃料は出題予想としてAランクであった為、
こりゃイカンなと思い重点的に勉強したが、
2025年では出題はされなかった。
だがしかし、「継続賃料」については、「継続賃料は、なぜ、現行賃料を前提とする必要があるのか?」
という点について説明が欠落している点は常にモヤモヤしていた。
当たり前すぎて、規準・留意事項に解説はない。
しかし、2025年には「子育て世代が流入する戸建て住宅地の地価変動」が出題された。
そんなん上昇傾向に決まっとるがな(‘ω’)
当たり前すぎる論点である。
だが実際に基準・留意事項を引用しながら、根拠を持って説明しようとすると、
意外と書けない。
当たり前である事を軽視してはいけない。
また平成 26 年不動産鑑定評価基準改正において「継続賃料」と「相当賃料」が同義であると規定されたが、この点に関し、今だ出題はない。
裁判沙汰の多い継続賃料の基礎となる定義を改定したのであるから、
基準・留意事項から離れるとはいえ、
継続賃料に関する論点を出すなら今年じゃね?
と思っていた。
結果的には出題されなかったのであるが、
実務経験のない素人は、時事ネタに基準・留意事項を当てはめる練習は、
現場思考型の問題の予行練習として、有用ではないかと思っている。
なお、「継続賃料は現行賃料を前提とする根拠」は
・賃料とは契約内容により、極めて個別性の高いものである。
・賃料の鑑定評価では事情変更のみならず諸般の事情を十分に考慮する必要がある。
・賃料において、契約の個別性、諸般の事情等は、具体的な賃料として現れるものである。
・継続賃料とは契約の更新、再契約時に適用される、契約当事者が変更しない場合の賃料である。
よって継続賃料においては現行契約の個別性を反映するために、現行賃料を前提とする必要がある。
的な論理構成を考えているが堂々巡り感満載である。
川原先生に会う事ができるなら、見解を聞いてみたいと思っている。
会えるかな・・・。
3,②不動産に絡む社会的な問題 「カチタスの価値足さない裁判」
これは知っている方も多いのではないだろうか?
カチタスが中古の戸建て住宅(土地付き)を購入し、自社でリフォームして販売。
この「土地建物一体としての販売」において、
a,土地売買は消費税非課税
b,建物売買は消費税の課税対象
である。
よって土地建物一体の価格の内、土地価格割合が高ければ、
購入者が納める消費税は低くなる=取引総額が低くなる。
そのために、カチタスはリフォームによる建物価値の増分は価格に考慮せず、
リフォーム前の課税標準額(しかも自社平均)で総額を按分し販売していたという驚きの案件。
「契約自由の原則」が根拠であるが、
さすがにやりすぎ、不正利用は許されません。
で、この「リフォームによる建物の増分価値」に関する基準・留意事項は、
1,総論第7章 原価法の留意事項(再調達原価の査定)
2,各論第1章「建物の及びその敷地が一体として市場性を有する場合における建物のみの鑑定評価」
に散らばっている。
1つの事象に対応する規準・留意事項は、総論、各論から集める必要があり、
現場思考型の問題は横断的理解を試す素材になるのだと思っている。
基準・留意事項を暗記している人ではなく「使える人」を合格させたい意図があるならば、
格好の素材。出題予想としてもB論点であった。
この論点は2025年い出題は無かった。
最高裁での判決が6月だったので、問題作成期限の制約等もあったのであろう。
細かい所を聞いてくる昨今の出題傾向を見ると、何か危ないよねとは思った。
4,②不動産に絡む社会的な問題「みんなで大家さん」
これは2025年にばっちり出題されたと思っている。
みんなで大家さん問題を要約すると
a,不特法を悪用したポンジスキーム疑惑(証券化対象不動産関連)
b,1万円/㎡で購入した「地目:山林」の荒地が、銀座並みの繁華街になったら地価100万/㎡だ(*’▽’)
そうなれば配当7%/年できます!と言って投資家に荒れ地を100万/㎡で販売。(宅地見込地関連)
c.子会社を通した合法的な財務諸表(資産)の水増し。
ドストライクの
・「宅地見込地」認定の違反、最有効使用の判定における注意点。
・証券化対象不動産への高い説明性・透明性の要求。
を含む問題である。
みんなで大家さんのスキームは数年前から問題視されており、
2000億円も不動産鑑定士が鑑定した結果である。
繁華街よりも荒れ地の方が単価が高いという謎鑑定、
こういう事、すんなよ(‘Д’)
というメッセージだったのでは?
と考えている。
もともと見込地、証券化はLECではA論点だったので、
タマタマじゃね?とも思うが、
不当鑑定の代表作。教養として一読の価値はあった。(中身はない)
5,出題傾向の結論
演習の地図は、実際の地図をデフォルメしているようであり、
その地を毎年検証されているツワモノもいらっしゃる。
理論の出題にも、時事ネタが関係しているのでは?
という考察は、もう数年、検証を続けなければならないが、
鑑定評価は浮世離れしたものではなく、
現実社会に根を下ろし、経済の基盤になるものであるからこそ、
不動産鑑定士を目指すなら、
社会経済の動向に注視しなければならないという、
試験委員からのメッセージも含まれるのではなかろうかと思った次第です。
なお受験生の出題予想は、何ら意味がないと思っています。
広く深く勉強しつつ、
社会人として不動産に関連する情報を収集し続ける「常識」が、
たまたま偶然、点数につながるだけだと考えています。
予想とか、ヤマ当ては読み物として活用すべきであり、
それにすがるのは危険です。
自らが確立した勉強方法を信じつつ、
社会を俯瞰する姿勢が大事なのかと。
そう思っている。